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「キャリートレードの資金調達」 スイスフランは安全か?

今回のコロナショックのようにマーケットの不安からリスクオフになると、株などの価格が下がる時には、マネーの逃避先に選ばれる資産は金や債券となります。為替市場では、日本円とヨーロッパの永世中立国であるスイスの通貨であるフランが金や債券と同じ特徴を持ってます。


 なぜ、マーケットが安定していてリスクオンになるとスイスフランは売られ、反対にリスクオフになると買われるのでしょうか?

 

リスクオン通貨としてのスイスフラン

1993年11月1日のマーストリヒト条約により誕生したEUからも距離を保つ永世中立国のスイスは、その通貨であるフランは「リスクオン」通貨として投資家は理解(共通認識)しています。大きな自然災害・戦争・テロ・軍事的緊張・世界経済の先行きに暗雲が広がるとリスク資産は売られ、逃げ出した資金がフランに回避するという流れになります。


記憶の新しいところでは2003年のイラク戦争勃発、2010年のEUの債務危機、2011年のアメリカ同時多発テロの時には、急激な高騰をしたスイスフラン。


その理由は、経常黒字が膨大であること、対外資産を多く保有していること、金もたくさん保有していることなどが上げられる。

*2018年スイスの経常黒字はGDP比で9.78%

*2018年末のスイスが国外に保有している資産から負債を除いた資産

 は99兆5千億円で世界第6位

 (日本は341兆5千億円で世界第1位)

*2018年スイスの金保有残高は1040トンで世界第7位

 (日本は765トンで世界第8位)

 

キャリートレードのための資金調達通貨

 

スイスフランが世界的リスクオフの時に買われる理由は、キャリートレードのための資金としてスイスフランが選ばれているからです。


世界情勢が安定していてリスクを取って利益を出したい時には、キャリートレード投資が世界中で行われます。


キャリートレードとは、金利の低い通貨で資金を調達して、新興国などの金利の高い通貨や資産に投資することです。


スイスフラン・ユーロ・日本の円は低金利通貨であるため、キャリートレード用の資金調達通貨として買われやすい特性があります。金利の低い通貨を売って金利の高い通貨を購入するのですから、キャリートレードは世界のマーケットが安定しているリスクオン相場の時に実行する取引となります。


その代わり、もし世界情勢に暗雲が漂い始めリスクオフ相場となると、資金回収のため投資先だった新興国などの高利回り資産や通貨が売られ、価格は下落します。そのためキャリートレードのための資金調達のため売られていたスイスフラン・ユーロ・日本の円は買い戻されるため、これらの通貨の価格は上昇します。これがレパトリエーション(資金回帰)です。


長期的に低金利政策を取っているスイスですが、2011年に政策金利を0%に、2014年にはマイナス金利を導入しました。そのため、スイスフランは低金利通貨としての魅力が高まりました。そのため世界情勢が安定しているリスクオンの時には売られて価格が下がり、世界情勢が悪化した時には買い戻されて価格が上昇するというチャートの動きを見せます。

スイスショック 介入に動いたスイス中央銀行

 

2011年にユーロが売られた欧州債務危機では、同時にスイスフランが高騰したことにより、スイス中央銀行は政策金利を0%に引き下げました。しかしスイスフランの高騰が続いたため、ユーロ/スイスフランの為替レートを1.20フランを下限として為替介入(無制限)を行うことを宣言しました。


この為替介入の実行により、ユーロ/スイスフランの為替レートは1.20フランから1.25フランの狭いレンジの中で上下する値動きとなりました。その後ECB(欧州中央銀行)もマイナス金利政策を行ったため、これによりまたスイスフランが買われることになりました。スイスフランの買いが続いたため、これに耐えきれなくなったスイス中央銀行は、2015年1月15日に予告なく1.20フランのラインの無制限介入を撤廃することを発表しました。


スイス中央銀行の突然の為替介入をやめるとのニュースが一瞬で世界中に広まり、ユーロはフランに対して、たった20分で約30%ものフラッシュクラッシュ(大暴落)となりました。


このユーロのフランの大暴落により、巨額の損失を被った個人投資家やFX業者が多く見られました。


これにより、スイスフランをキャリートレード用通貨として投資対象にすることに慎重になるトレーダーが増えました。


現在では、世界情勢に懸念が生じた時に買われる通貨は日本の円が常識となっております。スイスフランのように、有事の際に中央銀行により為替介入が行われる通貨は、レートに大きな混乱を発生させるため、投資家やFX業者から敬遠されるようになりました。

スイスフランをトレードする場合の注意点

 

スイスフランをトレードする場合の注意点として、下記の指標やイベントを注視する必要があります。

*企業動向指数(SVME購買部景気指数)

*雇用環境(失業率)

*消費者物価指数(インフレ率)

*財政状況(貿易収支・国際収支)

 

27ケ国のEU加盟国に挟まれたスイスは、これらの国と強い貿易関係にあるため、スイスフランは当然ユーロの経済状況に影響を受けやすい国となります。


ユーロはドルや円と違って情報が少ないことから、イベントや重要な指標の発表時にスキャルピングトレードすることは、とても難しい通貨となります。

スイスフランは、カントリーリスクからすると魅力のある通貨であることは間違いないでしょう。

 

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